厳冬期に食するコンビニアイスをこよなく愛し、美味いアイスを求めて日夜そこらへんのコンビニを渉猟する謎の集団、真冬のアイス同好会。ここはそんな地道かつうさんくさい活動を続ける彼らの公式ＨＰである。

　過剰の時代である。
　巷間にはきらびやかな衣装をまとった大量の情報達が闊歩し、生みの親である一握りの人間の思惑をばらまき、そして人々の欲望は限りなく均質化してゆく。
　物質も情報も過剰な時代だからこそ、それらに飲み込まれぬストイシズム、それらを選別するセンスが求められるというのに、だ。
　曇りきった目を磨き直すのは、難しくない。さしあたって我々に必要なのは、僅かばかりの小銭と近所のコンビニである。
　街へ出よ。アイスを買いに行こう。

　──己を、取り戻すために。

　肌も凍るような二月に食するコンビニアイスは、なぜあんなにもうまいのだろうか。

　数年前、この素朴な疑問を持つ者ふたりが、福岡の地において運命的な出会いを果たした。

　同好会の歴史の始まりである。

　会長交代。内部分裂。不祥事の発覚。『博多とよのか』の生産縮小。いくどかの危機があった。

　しかしそのたびに会を救ったのは、会員のアイスを愛する心であった。（シャレじゃないよ）

　危機を乗り越えた同好会は着実にその活動範囲を拡げ、今では関東支部を持つまでに至っている。

　１、真冬のアイス同好会（以下、『当会』）会員は、厳冬期に食するコンビニアイスを心より愛さなければならない。

　１、当会会員は美味なコンビニアイスの発見・報告に努めなければならない。

　１、当会会員は清貧を旨とし、１５０円（税別）を超えるアイスを購入してはならない。

　１、当会会員は硬派を信条とし、不純異性アイス交遊、あるいはこれに類するシチュエーションのアイス購入を行ってはならない。

　１、ハーゲンダッツは敵性アイスであるため、これを食することを厳に禁ずる。

　我が国が策定しているアイスの分類において、最も大切なのは乳である。まず乳のあるなしによって、アイスクリーム系と氷菓系に大別される。ちなみに、当同好会が『アイスクリーム』ではなく『アイス』という表記を使用しているのは、氷菓も広い意味での『アイス』と捉えているからである。決して略しているというだけではない。

　話を戻して、アイス系はさらに乳の成分によって３種類に分類されている。基準となる成分には主に乳固形分と乳脂肪分があり、基本的にはこれらがより多く含まれていればいるほど高級なアイスとされている。ひとことで言えば乳至上主義である。

　ここで上の表を今一度ご覧になっていただきたい。『ラクトアイス』の条件には乳脂肪分が見あたらないが、これは乳脂肪のかわりに植物性脂肪を使用しているためである。

　また、正式な基準はこの表の通りだが、現在はほとんどのアイスが『無脂乳固形分』と乳脂肪分とで成分表示されている。この無脂乳固形分とは、名前からも察せられるように『脂肪以外の固形分』のことであり、乳固形分全体から乳脂肪分を除いた部分のことである。まとめると

となり、現在メジャーな表示での『アイスクリーム』の条件は『乳脂肪分８．０％以上、無脂乳固形分７．０％以上』となる。
　このあたりの基準となる成分の曖昧さは（主に当会会員の）混乱の原因ともなるので、早急な指標の統一が望まれるところである。

　真冬のアイス同好会では、意欲に溢れる会員を随時（夏でも）募集している。

　年齢・性別・前科等は一切問わないが、ただひとつの条件は会則に同意することである。これは易しそうに見えて難しい。この会則を遵守するには、想像以上の努力と犠牲が必要になるからだ。ほとんど出家感覚とさえいえる。もし不祥事が発覚した場合には、厳罰をもって臨むのでそのつもりで。

　それでも入会したいという奇特な御仁は、酒井宛まで入会希望のメールをしたためていただきたい。その際、最低一種類おすすめアイスと推薦理由を記すこと。これはミシュランに取り上げられていないものが望ましいが、重複していても構わない。

　それでは、コンビニアイスを主食にしているアイスジャンキーや姑に買ってきたアイスがまずいといびられている若奥様など、多様な入会者を期待している。


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