招待講演

篠原 育 先生(宇宙科学研究所准教授)


タイトル:「あらせ」衛星の概要と科学衛星開発


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2016年12月20日午後8時(日本時間)にジオスペース探査衛星(ERG)=「あらせ」衛星が
打ち上げられました。衛星は無事に予定した軌道に投入され、3ヶ月間の衛星状態の健全性確認や
機能・性能確認を経て、今年の3月末から観測運用を開始しました。「あらせ」衛星の科学主目的は
放射線帯の電子加速機構・高エネルギー電子の消失機構を明らかにすることを通して、
放射線帯の変動メカニズムを知ることです。放射線帯はその発見が宇宙開発の黎明期である
1958年のことでしたが、その高エネルギー粒子の起源は発見以来、未だにわかっていません。
この目的の為に衛星は放射線帯外帯の中心部に長時間滞在することのできる衛星軌道をとり、
広いエネルギー帯における粒子観測、広い周波数帯における電磁波観測を行います。
この衛星は小型衛星であるにもかかわらず、先行するNASAの大型衛星Van Allen Probesと
勝とも劣らない観測を実現しています。
衛星の最新の状況を紹介しつつ、「あらせ」衛星のサイエンスにお誘いします。
「あらせ」衛星は日本では約四半世紀ぶりになる本格的な磁気圏観測衛星です。
衛星開発の経緯についてもあわせて紹介しつつ、自分たち自身の観測衛星を持つことの意味を考え、
衛星・探査機開発に対する関心を新たにしていただけたら、と思います。


鷲見 治一 先生(九州大学 国際宇宙天気科学・教育センター 客員教授)


タイトル:太陽圏外圏構造とダイナミックスの研究


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太陽圏は完全電離ガスである太陽風プラズマと不完全電離ガスである星間ガス(銀河系ガス)との
相互作用で形成されている。太陽圏最外層はヘリオポーズと呼ばれ、その大きさは星間ガス上流側で
太陽から約120AUであり、吹き流し構造をしていると考えられている。
1977年に打ち上げられたボイジャー1号及び2号探査機などによる観測及び
理論シミュレーション解析により、この分野の研究は大きく進展してきている。
それらの研究及び環境問題と関わる諸課題について紹介・議論していきたい。